中長期海外滞在(特に研究目的)に必要だったもの
以下の原則は大体あてはまっていると感じた:
- 渡航先で(その国の人たちに)需要があるものは、日本から無理に持っていく必要はない
カナダ滞在だった自分にとって、カナダになくて日本にあって日常的に必要だったものは:
- 性能のよいホッチキス
- 強風に負けない折り畳み傘
の2点だった*1。前者は、論文その他を紙に打ち出さない(デスクトップ上で処理)、後者は、傘を使う習慣があまりない、というカナダの文化による。なお、僕は投稿論文が帰ってきたその日にCanonのプリンター(スキャナー付き)を50カナダドルで買った。
生活用品や防寒具等は基本的に現地で調達する方が安い(生活必需品は税率が低い)。日本で買ったら1万円超え確実な分厚いベストも、セールで30カナダドルで手に入った。分厚い手袋・帽子は1カナダドルで買える。
- 非現地人にとって購入手続きの敷居が高いもの
これについては、費やす苦労・得られる経験・金銭的コストの比較、によって決めるべきであろう。僕の場合は、
- 住処:日本人オーナーのシェアルームを日本から国際電話をかけて押さえた(渡航前1週間未満!)
- 保険:クレジットカードの付属品のみ(航空券をそのクレジットで買えばOK&渡航期間半年未満のプラン)
- 電話:スカイプの1カ国(日本)と固定電話プラン(1カ月700円くらい)。携帯は持たなかったが、住処の住所・バンクアカウント・クレジットナンバーがあれば簡単に契約可能。
- お金:基本クレジット。*2キャッシュは、日本の口座から道端にあるATMで普通におろした。トラベラーズチェックはすべて換金*3。
長期滞在する人は、バンクアカウント・携帯契約は現地でした方が色々と都合が良いように感じた。
学位よりも”適応度”よりも大切なもの
1週間だけトロントから日本に戻って、学位公聴会発表と引っ越しを済ませた。公聴会では、Doctor Defenceではなく、Doctor Offenceのつもりで強気に挑んだ。質疑応答は及第点だったかもしれないが、発表に関しては練習の甲斐ありうまくできた気がする。スライドは数式に頼らず、解析結果だけでなくその過程も含めて、ほとんどポンチ絵で表現でき、おおいに(自己)満足できた。
そのあと、3年間適切に管理されなかった(笑)我が家の大掃除および引っ越しの手続きに移った。が、まったくもって準備が完了される気配がなく、業者もなかなか決まらなかった。トロントに戻るまでに残された日数はあと2日、引っ越しは誰の目にも絶望的だった。が、そんな状況の中、研究室の後輩4人が立ち上がり、我が家の引っ越しに取りかかった。乱雑した荷物は段ボールに次々とまとめられ、あっという間に業者との見積りが完了した。出発の前日、大家さんの「きれいに使ってくださって、ありがとうございます!」という言葉がすべてを物語っていた。みんな、ありがとう!
今日の講演は迫力満点
Andrew McAdam (University of Guelph)
"Spruce masting and eco-evolutionary feedbacks in red squirrels"
テーマは「迅速な進化と豊凶」。マツの球果動態は5年に1回豊作がある程度。この豊作年ではr戦略をとるアカリスが有利に、それ以外の年ではk戦略をとるアカリスが有利になるという仮説をたて、豊凶のリズムの中で素早い淘汰と進化が起きることを実証的に示したもの。競争に関する指標をなわばり(?)から算出し、競争の強さと増加率の関係を見事にプロット*1。さらに豊作年にはアカリス適応度(産子数)の分散が大きいことから、進化速度が早いと推測する。
さらに凶作年に外部からピーナッツバターを5トンほど毎年供給し、5年間の個体数応答をみている。捕食者飽食仮説との関係が明瞭に示されたわけではなかったが*2、r-k戦略が繰り返し起きている可能性を実証的に示した、興味深い発表であった。これからopen beverage、覚えてもらわねば。
留学中における未来への投資
短期間といえども、留学をしていると周囲からは「せっかくなのだから色々な体験をしたほうが良い」という声を良く聞く。ここでしかできないこともっとしなければいけないのかなと(観光、異文化体験など)。が、末尾の記事を読んで、「ここでしかできない未来への投資」をしなければならないことを再認識させられた。研究者にとってそれは、人脈作りや自身の研究を広めることであると思う。
正直、何とか結果を出してこっちのボスに相手をしてもらいたい、という受身の甘え意識が強すぎた。研究室にこもっていても、誰とも研究交流できないことにようやく気がついた。「未来への投資」量を上げることについて、「持てる時間を全てボスとの共著論文に費やす」という戦略は、状況によっては必ずしも適切ではない。
残念ながら、こちらの研究室内はセミナー等が何もないために、積極的にドクター・ポスドク・他研究室のスタッフにメール打ってアポ取って、話を聞くor聞いてもらわなければならない。そのためには、相手の研究内容等もある程度知っておくべきだし、こちらも向こうの興味に合わせて話をフォーカスするべきだろう。その準備に時間をもっと使わなければいけない。なぜか、こっちは飲みやパーティーの時に研究の話にならない。明らかに、ハングリーさが求められている。
留学前に取り組んできたものを大切にしなければと強く感じている。
「一生懸命になれなかったメジャー時代を反省」――元ロッテ・小宮山悟投手
- メジャー時代を深く反省
その意味で、メジャーリーグでの1年間をとても反省しています。どうして一生懸命できなかったのだろうと。本当に毎日ふざけて生活していました。わたしの中ではメジャーリーグでプレーできることが「ご褒美」になっていました。一生懸命頑張ろうという思いは心のどこかにあったのでしょうけど、それよりも神様がくれた最後のチャンスだから楽しまなければ損だという気持ちの方が強かったのです。ハングリーさが欠けていました。
文化の違いや食べ物なども全然苦になりませんでした。日本にいるときは細かく食事メニューを決めていたのですが、米国ではまったくお構いなしで、まるで観光客気分でした。もう一度人生をやり直せるのであれば、あの時に戻りたいです。
研究環境について
箇所書きで羅列してみると
施設について
研究室運営について
- 完全放任:まさにフリーダム。
- 学位取得までの道のりが長い(4−6年):AmNat級×3+TREEが平均
- 研究室内セミナー:一回だけ実施、しかもボスが自身の投稿前論文内容をみなに話して意見を求めただけ。
- 学科内セミナー:これは凄い!学外から呼んで週に3−4回は実施。理論系の講演者は必ずボスの部屋に訪れるので、同じ部屋にいる自分も挨拶可能*1。講演者の詳細は⇒http://www.eeb.utoronto.ca/seminars/archive。講演者の半分程度は「多種の共存はなぜ起こるのか」をテーマにし、中立説を否定したり肯定したりするかたちでストーリーを構成していた。
その他
みんな広く勉強している印象が強い。夜遅くまで残るのは遺伝子組み。共著者or謝辞に乗せる人以外とは、ほとんど交流しないポスドクもいる。発言しないと空気扱い。
トロントは今年数十年に一度の暖冬だそうで、大変快適。
*1:挨拶は難しい。何回Nice to meet you, といわれてme tooと返事してしまったことか