「生命の数理」をざっと見た感想

単純な「食う食われるモデル」や「タカハトゲームモデル」を予備校で教わり、その「魔力」に完全に魅せられた。
大学入学後にすぐに「数理生物学入門」を購入したが、興味あるページだけを拾うという器用な読み方ができず、リャプノフ関数が出てきた瞬間ギブアップしてしまった。
あれから6年、同じ著者による「生命の数理」を手に入れた。
カオスがらみの個体ベースモデルについては「少し」、集団遺伝・量的遺伝・適応ダイナミクス・確率過程については「ほんの少し」修行を積んだこともあり、本の内容のかなりの部分についていくことができそうだ。
同時に、「自分の研究が、著者らが築いたフレームワーク内に完全に収まっている」ことにも、否応なく気づかされた。
「数理生物学入門」が出版された15年前も、きっとかなりの人が同様のことを思ったに違いない。
客観的に考えて、このフレームワークを大きく塗り替えるような研究ができるとは考えにくい。
このフレームワーク(が存在するということ)を前提として、自分の「色」を出していくことが大切であると思う。
そのための最短の道は、「数理生物学者」以外の属性を持つことである。

「あとがき」からそのまま引用すると、

これからの数理生物学は、爆発的に増大する生命科学の知識に対応するモデリング情報科学が1つの柱となり、他方で環境科学や経済学との連携を第2の柱として進むと思われる。

将来、前者に転ぼうとも後者に転がろうとも対応できるように、アンテナを広く張っておきたいものだ。
これは、上に書いたことと矛盾するかもしれないが、「数理生物学者」としての意地、もしくは「生物学者」としての意地によるものなのであろう。